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CPUとVGAがくっつくと?ATIとAMDが合併発表 <2006/08/18 更新> x86系CPU製造世界第2位のメーカーAMDが、GPUメーカー最大手ATIの買収を正式に発表した。 技術&コスト的には重複する技術開発を統一し、CPUとGPUの親和性を高めた製品の開発が可能になるなど、予想できるメリットは大きい。しかしATIの立場からすれば、既存市場に起きている大きな変化が無ければ決断しない合併だったかもしれない。合併で合意した過程には次世代PCと、新デジタルAV家電市場の存在がある。 x86系CPU製造世界第2位のCPUメーカーAMDが、GPUメーカー最大手ATIを買収する事を発表した。 数ヶ月前から予測されてきた合併だが、大きな疑問が残る。 CPU&GPU半導体の出荷量を見るとIntelに次ぐ2番目の出荷量を誇るATIが、AMDとの合併をこのタイミングで受け入れる理由は簡単には見つからない。 最大の疑問は、Intel社製の「GPU統合マザーボード」の存在だ。ATIはその統合マザーボードに大量のGPUを供給しており、ライバルAMDとの合併後にこの市場を失うとなると短・中期的に大きな売上の減少は否めない。そうまでしてAMDと組む理由は? この答えはPCを含むより広いCPU市場の視点で見ることにより、PCを取り巻く市場が大きく変化し始めている事に反応した合併に見えてくる。 両社の合併要因として真っ先に挙げられるのが、 ①技術開発に対するメリット 半導体の「高速&集積化」と「複数コア搭載」を同時平行して開発できる。 両社の主要課題は「複数コア搭載」と「省電力=低発熱」だ。 ATIの主要課題は、Intel社製の統合マザーボードに供給してきた「ローコストチップ」の開発と「集積による高速化」と「並列」だ。 しかしGPUは高速化の過程で生まれる副作用「高温化」の問題を解消しきれておらず、これ以上の性能向上には、AMDが持つ省電力技術は必要で、「並列」に関しても先行するAMDの技術は大変大きくなる。 ②コストのメリット 技術開発の統合による開発経費削減はもちろんだが、ATIのMPUを生産する工場群の有効利用が挙げられる。 独自の製造技術を必要とするCPUやMPUの生産が行える工場は限られている。 当然、買収にかかった費用を用いれば工場の建設も可能だが、お金を使ったからすぐCPUやGPUの製造が行えるわけでもなく、中長期的な設備投資を有効に行えるメリットが考えられる。 ③上場企業としての責務 これについては予想の域を出ないが、Intel社が寡占する現PC市場の中で、AMD社のシェアはこれ以上大きな成長をするとは考えにくい。AMD規模の上場企業としては企業買収による成長しか道が無いのも事実だろう。 しかし、これら3つの要因を考えてもなお、ATIが合併を受け入れた答えにはどうしても成らない。Intel社の統合マザーボードにGPUを提供しつづければ、AMDよりも安定した運営を行い、CPUより低リスクのGPUの開発に専念していられたはずだ。 さらに将来的にはIntelとのより強固な関係構築も予想できていたはずだ。 なぜ?この疑問に対する答えは「PC市場が現在の規模を保っていられるのは、今後数年で有る」と両社が考えたとしたら、この合併にも説明がつく。 ■ IBMの動向が示す「コンシューマーPC→Next?」の流れ PC市場は今後、現在の規模で成長し続けられるのか? この問いに既に答えた企業が有る。 それは、DOS/V互換規格を策定し現在のPCの基礎を築いたIBM社だ。 同社は既に、コンシューマーPC部門やHDD製造部門を売却している。 IBMは、PC部門の大部分を中国企業に売却した後、ワークステーション、サーバーなどの市場に絞って展開し、現在の市場占有率は事実上1位だ。 IBMはそれらの市場で、脱WindowsOSを進め、UNIX、Linuxの採用を進め、低コスト化や信頼性向上を実現している。 そのIBMが次世代のサーバーやワークステーションの開発の中で、最重要課題に据えているのが、分散コンピューティング「グリッドコンピューティング」の実現だ。 グリッドコンピューティングとは、スーパーコンピューター、並列サーバー、ワークステーションでは一部実現している技術だが、端的に言えば、 「並列処理を前提に作られたCELL(ハード)と、専用のOS(ソフト)を、ネットワークで接続し、既存のスーパーコンピューターを上回る処理能力をネットワーク上に実現するシステム」だ。 IBMは自社のみならず、他社と共同で「ハード」と「ソフト」の開発を行っており、その要が「CELL」に代表されるマルチコアCPUの開発と、マルチコアCPU専用OSだ。 IBMは自社製のサーバー、ワークステーションで「CELL」採用を表明している。 CELLと専用OSが有れば、安全性の高いLinuxやUNIXを利用でき、「グリッドコンピューティング」の実現が可能になる。 そのためにもう一つ大きなパーツを構成しようとしたのが、コンシューマー市場だ。 しかし自社ではコンシューマー向けの開発、販売部門を持たないIBMは、SONY、東芝と共に、今年末に発売予定のSONY社Playstation3に「CELL」を組み込んだ。 実はここに、AMDによる買収をATIが受け入れた、大きな要因の一つが推測できる。 前述したIBM社を筆頭に、SONY、東芝そしてAMDが、次々世代CPU&GPUの45nm製造プロセス開発の最先端連合体を形成している。 ATIはIntelとの関係値では、45nm製造プロセスの開発を共同で行うことが出来ない事を危惧し、明確に45nmプロセスを開発している同連合体への参入を次々世代の最重要課題と捉えた可能性がある。 更に合併しなければ、「CELL」系チップと連動して動作するGPU技術開発に参加できない危険性を危惧した可能性もある。 現に、従来までWintell連合とまで呼ばれた、Microsoft社ですら、同社のXbox360にIBM社製マルチコアCPUを採用している。 未発売だが、任天堂の次世代ゲーム機Wiiも、IBMのCPUを採用している事は、非常に重要な事実だ。 ■次世代ゲーム機と呼ばれる機器の本当の姿-家庭用インターネット端末 コンシューマーPC市場以外で、高速処理CPUが必要な成長する市場は、ゲーム機と、デジタル放送や次世代DVDに代表されるHDコンテンツを記録&再生できるAV機器だ。 各社に先行して発売されたMicrosoft社Xbox360も、ゲーム機能だけではなく、通信サーバー機能や、「HD DVD」再生機能を後付けできるなど、通信や、次世代AV機器の能力を提供している。 さらには、新WindowOS「Vista」の提供以降は、既存のPCとの親和性を高め、Apple社の「iTunes」への対応も囁かれている。 年末発売予定のPS3に至っては、現在普及しているPCに比べて高速な1000BASE-T経由の通信に対応し、次世代DVD「Blu-ray」の再生機能を装備している。 PS3が持つ最大のPC競合ポイントは「インターネット閲覧」と「通信」だ。 まだ完全には公にはなっていないがPS3が「CELL」を搭載した最大の要因は、次世代ネットワークサービスの提供だと言われている。 すなわち、IBMが中心になって実現しようとしている「グリッドコンピューティング」のコンシューマー用端末が「PS3」なのだ。 IBMやSONYは、それぞれ得意分野でシェアを拡大し、ユーザーに意識さする事の無いまま、インターネット経由でWEB上にグリッドコンピューティングを実現しようとしている。 その能力を活かせるまでには、数年はかかると思われるが、一般のユーザーが、超並列コンピューティングによる能力を享受できるようになれば、通信やコンピューターの概念自体が大きく変わることに成る。 いずれも世界市場全体で合計すると、数年後には数千万ユーザー規模に届く、巨大市場である事は疑う余地が無い。 しかしPS3の発表当初、GPUを搭載せずCELL単体で映像の演算までを行う計画であったが、現在公開されている情報ではnVIDIA社のGPU「RSX」を搭載する事が決まっている。 これはATIにとっては非常に頭の痛い事実だ。 なぜなら、ATIはPC市場に限定すればトップ企業の一角を担っているが、今後市場拡大が予想される非PCのデジタルAV機器市場では、技術的に遅れを取る事になる。 ATIが危惧する遅れは、IBMやSONYが開発しているCELLの存在だ。 既存のCPUと大きく異なる設計のため、開発ノウハウをこれから構築している段階だ。 だがそれは、ライバルnVIDIAはCELLの技術を既に得ているが、ATIは大きく送れた事に成る。 さらにSONYはPS3を従来機のように固定性能にしない可能性を示唆している。 すなわちCELLを筆頭に性能向上した新verを搭載したシリーズ製品の発売の可能性を示している。 こうなるとCELL技術ではnVIDIAとの差は縮まらなくなる可能性が高く、ATIは行動表の修正が必要に成っていたのかもしれない。 完全に妄想の範疇だが、PS3が発売後も性能向上を視野に入れているならGPUの席をATIが奪える可能性が0に成ったわけではない。 更に言えば、AMDがCELLの開発や生産に参入する可能性も0ではない。 実際に、Intel社はPentium4CPUを、東芝製のHD DVDレコーダーに供給している。 そこからも、数年後にBlu-rayプレイヤーやレコーダー向けに、AMDが「CELL」の互換チップを作る可能性が0だとは考えられない。 ATIやAMDなどの最先端技術メーカーは目先の利益より、数年後の市場状況を予測し、技術の開発と実現をする事が存在理由だとすれば、IBMやSONYが実現しようとしている「CELL」中心の非PCコンシューマー市場を真剣に捉えている可能性もある。 とは言え、ATIのGPUも既に発売されているXbox360に搭載され、今後発売される任天堂社Wiiなど、コンシューマー機器市場での影響力は数年先までは保証されている。 Intelとの関係値低下は否めないが、ユーザーから支持を受ける同社のGPU搭載VGAは今後数年は販売が続くだろう。 ■非PCのインターネット端末化は実現するか? 家庭のインターネット接続端末がPC寡占状態から、PS3などに切り崩された後の市場規模が現在と同じである筈が無い。 Microsoft社がXbox事業を継続し、PCでは入り込めなかった市場を手に入れる為に世界規模で行動している事実が、インターネットのPC寡占時代の終焉を物語っている。 しかしその影響が微細ですむか、大きくなるかはハード以上にソフトの性能に左右される。 最大の懸案事項が「インターネット閲覧ソフト」の性能だ。 PC市場では、Microsoft社のInternet Explorerの寡占レベルが高すぎて実質競争が成り立たないため、ソフトの性能が高くても、対応できるフォーマットが少ない場合が多い。 理由は単純でライセンス料を払えないのだ。 結果、IE以外のブラウザーソフトでは正確に表示できないページが存在する。 だがこの問題はPS3などには当てはまらないだろう。 PS3が世界市場で創生するインターネットユーザーは2年内に数百万規模を超えるだろう。遅くても4年後には数千万規模に達するはず。 そうなるとSONY製ブラウザーは、現IEが対応するフォーマットとほぼ同等の対応は実現するだろう。その規模の市場を見過ごすほど怠慢な企業は存在しない。 ■処理速度向上が急務な理由はHD PC市場がもしこのまま、よく語られる「ムーアの法則」の性能向上ペースで推移すると大きな壁にぶつかる。 競争対象が事実上存在しなかった、家庭内インターネットサーバーとしてのPCシェアが切り崩されると、開発予算が従来のペースでは保てなくなり、更には開発自体を別分野にも振り分けねばならなくなる。 それが顕在化したのが、Intel社のCPU開発計画の大きな変更だ。 それまで処理速度向上と、高密度の集積化が最優先課題であったのに、省電力化とマルチコア化に移行した事だ。どちらも今までのPCでは後回しにされてきた事だが、家電やAV機器では必要な技術だ。 結果、Intel互換路線を取るAMDは大きく方針転換することを余儀なくされ、中長期的にCPUの開発速度と、予算を考えた時、ATIの買収が最も現実的な答えであったのだろう。 PCは現在、急速に普及が進むHigh Definition(=高解像度)コンテンツ、Blu-ray、HD DVD、各種デジタル放送、MV9HDなどに代表されるWEB用コンテンツの再生に対応するだけでも一苦労である。録画や記録となると、安定した動作環境を得る事は更に大変だ。 結果PCは、これらコンテンツ毎の市場で、専用AV機器に負けている。 判りやすいのが、録画機器だ。 2年弱前までは、デジタルで録画&保存する機器としてPCに並ぶ製品は少なかった。理由は競合する製品のコストが高く、PCの価格対性能比が評価されていた。 しかし、HDデジタルコンテンツによって台頭し始めた、HDデジタル対応のAV機器に、今後の成長市場を大きく奪われてしまうのは免れそうに無い。 現に、日本国内の市場でここ数年急拡大しているのは、デジタル放送コンテンツを録画&再生できる機器だ。「HDD&DVDレコーダー」や「HDTV搭載録画機能」「デジタル放送チューナー」に奪われた市場を、今後取り返す術は無いようにすら思える。 理由は様々だが、最大の要因は「特集>地デジ規制緩和?」を参照して欲しい。 デジタル音楽コンテンツに関しては「iPod」の成功によりまだまだPCに分があるように見えるが、Apple社はMacにこだわらずWindowsPC市場に進出しており、現市場のみにとどまっているとは考え難い。なによりもAppleはコンテンツビジネスの最初の成功者であり革新者だ。PC以外のネットワーク端末を排除する理由は無い。 そして一番危惧しなければいけないのがインターネットブラウジングと、メーラーだ。 正直並び立たないと見る専門家も多いが、家庭内でインターネットにアクセスできるならより簡単な操作性を持つ家電機器に分があり、既に並立する携帯電話メールとの協調を進められれば、急速に成立する可能性は高い。 PCではユーザーニーズを満たす事が出来ない市場を狙い、確実に手を打っているPC系企業が、IBM、SONY、NVIDIAなどだろう。 しかしPCも、Intelが主導する複数コア&省電力化を組み合わせた技術を、開発&応用していければ、今後も十分に成長余力があり、今後数年は安泰であろう。 しかし、IBMが仕掛けてきた競争は、後出しじゃんけんさながら非常に巧妙だ。 PC側の半導体メーカーが、更なる技術統合を急がないと、IBMはPS3の成功による追加投資でCELLを大きく性能向上するだろう。 CELLは開発しなければならない様々な課題があるが、クリアしていけばIBM連合と現PC市場規模は等しくなる可能性まである。 今まで、最速が存在理由だったCPU&GPU市場のジレンマをどのようにクリアしていくのかは、楽しみであり、願いでもある。 AMD+ATIには新市場への早期挑戦も期待したい。 彼らの提案が、現在広がっているPCと次世代AV家電との溝を埋める可能性がある。 PC市場の囲い込みのような後ろ向きではない進路を、王者Intelにも期待したい。 PCを成長させてきた彼らにしか出来ない技術があるのだから。 掲載商品リンク |